アナウンサー好き

 今日はこれから所属寺の門法会なので、早めの更新を。
 学会の事務仕事(の今日の分)を終えて、休日らしくラジオを聞きながら昼の風呂を浴びていたら、永六輔さんの声が聞こえてきた。声は聞こえてきたのだが、何をおっしゃっているのか7割ほどしか聴き取れない。もともと滑舌が悪く早口な方だが、体調を崩していらっしゃるようで声がまるで出ていないのがお気の毒だ。声を腹から出せと言って若いアナウンサーをさんざんいじめて厳しく指導していらっしゃったのも、今は昔の物語である。
 その番組では「私の好きなアナウンサー」というテーマで1ヶ月ほど前にリスナーから募集したハガキの「積み残し」を読んでいた。どうでもいいが、このテーマの設定そのものに独特の色がありはしないか。アナウンサーに好きも嫌いもないとか、アナウンサーの名前など覚えようとしたこともないという人も多いように思われてならない。
 けれど、私にはこのテーマに応える用意がある。だいたい、私をアナウンサー好きにさせたのは永六輔さんにほかならない。その昔、NHK総合テレビで放送していた「ばらえていテレビファソラシド」は永さんの番組だった。この番組は、NHKの女性アナウンサーが進行役として何人も出演するのが売り物で、これは永さんの発案だったという。幼い私は、アナウンサーの頼近美津子さんが同じくアナウンサーの古藤田京子さんとピアノの連弾を披露するのをドキドキして(いたかどうか覚えはないが)見ていたのだ。後の「女子アナブーム」の先駆けともとも言うべき記念すべき番組なのだが、要するに、永さんはアナウンサーが好きと言うことだ。
 私について言えば、「テレビファソラシド」で芽を吹いたものが、TBSの「朝のホットライン」で見事に開花したのである。で、好きなアナウンサーだが、NHKでは、斎藤季夫さん、高梨敬一郎さん、明石勇さん。スポーツ担当の方だと、島村俊治さん、刈屋富士雄さん。女性では、山根基世さんに杉浦圭子さんと言ったところか。刈屋さんと杉浦さん以外はみなさん退職されているが、杉浦さんは現在もご出身の広島でご活躍とのこと。女学院の卒業生とうかがっている。民放では、IBC岩手放送の大塚富夫さん、菊池幸見さん、戸田信子さん(退職)。在京局では、テレビ朝日の山口容子さん(退職)、岡田洋子さん(異動)、松尾由美子さん、清水俊輔さん、TBSの安住紳一郎さん、テレビ東京の大江麻理子さんといったあたりか。女性ばかりでなく男性もきちんと選んでいるところが、私が「女子アナ好き」ではなく「アナウンサー好き」であることの何よりの証左である。
 男性アナウンサーの声はやや高めがよく、女性アナウンサーの声はやや低めがよい。もっとも、これは声の質の問題ではなく、発声法によっていくらでもコントロールすることができる。抑制のきいた語りは説得力を生み、その上に軽妙や洒脱といったものが成立する。また、演出を越えた臨場感が伝えられるのも基本となる発声が確立されていればこそである。話すことを生業とする人々の匠の技に心震える思いがする。