高校時代のある日のこと、「¶」という記号の名前(どう読むのか)が話題になり、解決策を持たなかった私たちは英語の研究室に駆け込んだのだった。先生方も記憶をたどり資料にあたりながら私たちに対応してくださったのだが、ある先生が読み方を思い出されたらしく「たぶん間違いないと思うよ」とおっしゃりながらある本を開いて確かめたうえでそのページを示してくださった。
 この記号の読み方は paragraph。そのことが記されていた本の名は『英語ニューハンドブック』(長井氏晸*1編著、1967、研究社出版)。中学の頃から、父の書棚から引っ張り出しては、英語圏の各国の国歌やら花ことばやらを読んでいた本だった。私は、信頼する先生方の知識とレファランス能力に敬意を深めるとともに、この本の内容の充実ぶりにあらためて感心したのだった。
 高尾での授業中、学生たちに「:」は何という名前の記号かと問いかけながら、そんなことを思い出していた。そして、コロコロと転がるお菓子の外側だけをはがして食べたことや、中のクリームだけを先に抜いて食べたことなども、ついでに思い出したりしたのであった。

*1:長井先生のお名前は「うじあき」とお読みするようだ。「あき」の字は「日」の下に「政」。