エー女子大、イー女子大

 昨日付の日記に思いがけぬ反応をいただいたので、今日も大学の名前のことを書いておこう。
 大学の生協や購買部の売店でよく売られているもののひとつに、大学名の入ったクラッチバッグと呼ばれるものがある。教科書やノートなどを入れて片手で抱え込むようにして持ち歩く、厚手のビニールでできた二つ折りの袋のことだ。
 ずいぶん前のことになるが、ある女子大学の学生が持ち歩いていたクラッチバッグに「○○ Woman's University」と印刷されていたのを見たときはちょっと驚いた。驚いたというより、「Woman's University」という表記を見とがめたと言った方が正しいだろうか。
 日本中の女子大学の英語名を見てみると、お茶の水女子大学(Ochanomizu University)、フェリス女学院大学(Ferris University)、跡見学園女子大学(Atomi University)のように「女性」を意味することばを用いていない大学も少なからず存在するのだが、「女性」を意味することばを含む場合は、奈良女子大学(Nara Women's University)、日本女子大学(Japan Women's University)、同志社女子大学(Doshisha Women's College of Liberal Arts)のように「women's」を用いる例がほとんどなのである。「woman's」を英語名に採用しているのは、僕が調べたところでは、東京女子大学(Tokyo Woman's Christian University)と川村学園女子大学(Kawamura Gakuen Woman's University)のみである。
 僕が見とがめたのは、この2つの大学ではない女子大学だった。学校名の表記にこだわりを見せないのは好ましいことではないと思うのだが、どうだろう。
 以前、学会の重鎮であるD先生に「東京女子大学だけが woman's university を名乗っているのですが*1、どういうことでしょう」とたずねてみたことがある。D先生は「アメリカあたりの古い女子大学はどこも woman's university ですね」と答えてくださった。東京女子大学が創立した1918年当時、女子大学と言えば woman's university の表記しかなかったわけで、日本で最も早く「女子大学」を名乗ったこの大学がその名称を用いたのは当然のことだったのであろう。僕は東京女子大学の校史も読んでみたが、英語名に関する記述は見出すことができなかった。そのことからも、この大学が特段の思いなく英語名を定めたことがうかがえるように思う。


 英語名の表記に関して少し付け足すと、長崎の活水学院は「Kwassui Gakuin」を用いている。関西学院が「Kwansei Gakuin」を用いているのと同様だ。「かっすい」ではなく「くゎっすい」、「かんせい」ではなく「くゎんせい」と発音すべきなのだろうが、文字ではうまく伝わらない。宮田先生でないが、見本を示してみたくなる。
 ついでながら「本願寺」は、お西は「Nishi-Hongwanji」でお東は「Higashihonganji*2」である。お西の人たちは「ほんぐゎんじ」ときちんと発音するべきなのだろう。

*1:当時はそういう認識だった。まさか、川村学園が…との思いはある。

*2:ハイフンは用いないようだ。