つまみ食い

 おせち料理と言えばつまみ食いである。母の自慢のおせちの1つは「酢ごぼう」だが、すり鉢を抱えて手伝いながらできたてをつまんだのも懐かしい思い出だ。おせちに限らず、つまみ食いをした覚えのある人は多いことだろう。
 では、よそからいただいたまだ包丁の入っていないホールケーキから1切れ、自分の分だと言って黙って切り出して食べるのはつまみ食いだろうか。台所や居間に置いてあったお菓子やカッブ麺を「落ちていた」と言って自分の部屋まで持って行き、机の引き出しに隠しておくのはつまみ食いだろうか。
 ちょうど1か月前の今日、12月2日放送の「サザエさん」の1話目「カツオつまみ食いの哲学」に出てきたカツオはそれらをすべてやってのけたのだ。食事をしながら見ていた我が家の家族も相当気分が悪くなったようで、母などは「あれはつまみ食いじゃなくて『盗み食い』だ」とぽつり。
 話は続く。叱ってもらおうとサザエはお父さんに頼むのだが、なぜか波平は「まあまあ」と軽く受け流してしまう。サザエが「お父さんのおつまみも食べちゃったのよ」と伝えると、そこで初めて「ばかもん!」と雷を落とすのだ。「自分の利害で人を叱るなんて最低。叱るときは『義』で叱れ」と今度は僕が一言。そして、直ちにチャンネルをかえた。
 僕も日曜日は「笑点」と「サザエさん」を見なければ終わらないと思っていた一人だったが、あれから一度も「サザエさん」を見ていない。もう二度と見ないような気もしている。