淡々と粛々と

 週末に京都で予定されていた会の理事会と例会は取り止めることになった。誰もが心に思いながら言い出せなかったことなのかも知れない。あるきっかけをもらい、それから加速度的にことは運んだ。後になって取り越し苦労だったと言い合えるくらいでよい。無理をしてはならない。
 私たち事務局は「瀬戸際の魔術師」だ。バタバタと電話で連絡を取り合って中止を決め、各方面に電子メールやファクスで連絡する。通知の文案を練っている時間もないが、それでも最善を尽くす。実際には「魔術」などではなく、すべきことを淡々と粛々と進めるだけなのだが。
 地震の発生以来、ずっと心配していた福島県南相馬市にお住まいの会員に電話をかける。最悪の事態を恐れ今日まで連絡を取れずにいたが、例会の中止を伝えるということが理由となって思い切ることができたのだった。聞こえてきたのは、いつもの調子で「大丈夫ですよ」の一言。胸をなで下ろした。
 それにしても、あの日から酒が身体に入らない。もともと家で毎日飲むというタイプではなかったのだが、心のどこかに不安があって、身体のどこかに緊張があるようだ。さまざまのことから解き放たれてホッとできる日はいつになるのだろう。