イヤイライケレ

 アイヌに関する英語の聴き取りを始める。英文のテキストでは「アイヌ語起源」としか記されていない札幌・釧路・旭川の名の由来についてプリントで若干の補足。北道邦彦氏の『アイヌ語地名で旅する北海道』(2008、東京:朝日新聞出版)が大いに役に立った。古典的名著として知られる知里真志保氏の『アイヌ語入門:とくに地名研究者のために』(1956、東京:楡書房)の複製版(1985、札幌:北海道出版企画センター)もほんの少しだけ参考にする。この本は私のような初心者には難しい。
 アイヌ語、アイヌ語と言ったところで、それがどのような響きを持つことばなのかわからなくては話にならないかと思い、中川裕氏・中本ムツ子氏の『CDエクスプレス_アイヌ語』(2004、東京:白水社)も活用。録音を聞き始めたところ、いきなり「シネ」と言われてみんな驚いたが、これは「1」という数を表すアイヌのことばだ。「ありがとう」という意味の「イヤイライケレ」ということばは耳に残ったようで、しきりに口にする者もいた(私もその1人だが)。どうだろう。みんな、はじめて "Thank you." と言えたときの感激を忘れてはいないか。つい先ほどまで知らなかったことばを知っているよろこび。大きなことを言うようだが、「イヤイライケレ」と言える自分は、言えなかったときの自分とは違うのである。