つらい思いがするのなら、壊さなければよいのでは

 明石小学校の解体問題で東京都中央区の区長・副区長が記者会見。その内容が夕方のNHKテレビ「首都圏ネットワーク」で報じられると知り、出先で「聴く」ことにした。テレビの音声が受信できるラジオを持っていてよかったのだけれど、いったい何のための記者会見だったのか。
 まずは、現段階で計画の修正は難しいという区の基本姿勢にがっかりした。区側の発言として伝えられた「一部住民の不満」ということばには、建築や歴史や教育の専門家も加わって大きく問題化していることを無視する態度がうかがえたし、「バリアフリー」ということばを持ち出す卑怯ぶりには大きな憤りを覚えた。
 帰宅後にチェックした TOKYO MX の報道では、区長の「こどもの幸せをまず第一に考えようと、これが本区の姿勢でございます。特に学校におきましてはね」ということばが強調されていた。まったく何をか言わんやである。副区長の「区長をはじめ、ここにいる人間が、そんなにこにこしながらにやにやしながら壊しているわけではない。みんな相当つらい思いをして壊している」との発言を聞くにおよび、語るに落ちるとはこのことかと思った次第。
 こどもの幸せを追求しようとするならば、歴史のある建物を残すことをこそ優先するべきだ。こどもたちにとって「文化財」の中で生活するということがどれほど意義深いことか考えてみるとよい。その校舎で、こころの垣根を取り払おうと努めることのできる人に育ってもらいたいものだと思う。建物のバリアフリー化には現在の校舎を改修することで十分に対応できるはずだし、何よりバリアフリーにとって大切なことは建物ではなくもっぱら人間の側にあるのである。