「ゆとり」あってこそ

 以前の職場で大きな行事があり、「ゆとり教育」の推進者として知られた某氏にスピーチをお願いするべく、うやうやしく紹介させていただいたことを覚えている。思えば、そのときも私は司会をしていたのだな。某氏は、飄々としていると言えば聞こえもよいのだけれど、少しく軽薄な感じがしてなんだかがっかりしたこともよく覚えている。
 小学校の教科書が厚くなるという。円周率は「3」ではなくて「3.14」に戻るのだとか。僕らが小学校の時代も、まず「円周は直径のおよそ3倍」という導入があって、しばらくして、どんな方法でだったか、実は「3.14倍」に近いのだということに気付かされるような授業があったように記憶しているけれど、最近の子どもたちは後半の部分を経験しないでいたわけね。

  • 産医師 異国に向かう。産後 疫無く、産婦 御社に。虫 散々闇に鳴く。御礼には早う行くな。
  • 3.141592653589793238462643383279502884197

 これは、いいおっさんになってから、私たちの会の会長に教えてもらった円周率の覚え方。出だしの「産医師 異国に向かう」までは知っていたけれど、続きをサラサラと紙ナプキンに書いてくださった。紙ナプキンだったのは酒の席でのことだったからなのだが、あんな達筆を実にもったいないことだ。あの紙はK君が持ち帰ったのだったか。
 文字の使い方はうろ覚えなのだが、産後の肥立ちもよくお宮参りをしたという話だと考えれば、この字でよいのではないかしら。仏教では「初参式」と言うけれどね。和泉元彌・羽野晶紀夫妻が赤ちゃんを抱いて築地の本願寺にお参りしたのを芸能ニュースで見たことがあるが、あれが初参式。
 でも、この覚え方、産後に具合が悪くなって、薬が無いものだから赤ん坊を抱いてお宮さんに行ったということかしら。夜中にお百度でも踏んでいて、虫が散々に鳴いていると。ああ、なんとおどろおどろしい。いずれにしても、いのちの事実に立って生きていきたいものだ。

  • 前のbさん侍屋敷。bの2階で舞い酔へし。下では笛で大騒ぎ。

 これは、二次方程式の解の公式の覚え方。中学校3年生の夏に学増(学力増進会)の講習で教えてもらった。こんな覚え方を覚えるくらいなら公式を覚えてしまった方が楽だよと言われたが、この覚え方の方を覚えてしまった。
 あの頃から「無駄知識」を求めていた。こういったものは詰め込んだ覚えがない。無駄知識は「ゆとり」あってこそのものである。