のうぎょう、とうきょう

 夜、K君に誘われ、池袋の東京芸術劇場で『農業少女』を観る。2000年の野田秀樹の本を、初演時に野田とともに舞台に上がっていた松尾スズキが演出するもの。今回の出演者は多部未華子、山崎一、江本純子、吹越満。
 演者の、特に男性二人の発声のよさと言語音の美しさに圧倒される。あれだけ大騒ぎの舞台であっても、単におもしろいだけでなく、主題が明らかに迫ってくるのを感じるのは野田の本の凄味かと思う。実際、松尾自身が、チラシに「今回演出をするにあたっても、『おもしろく演じていただく』ことに力を注ごうと思う。台ホンは野田さんが書いているのだ。おもしろくやればなんとかなると信じている。芸術はおもしろくていいのだ、というボクの信念を、この芝居を通じて感じていただければ、幸いです」と書いているのは興味深い。
 前から2列目の席だったので、自分の大きな身体が申し訳なく、気分としては身を小さくして観た。開演前、後ろの席の人が、以前に舞台を観たとき前に大きな人が座っていてまるで見えなかったなどと話し始めたものだから、ますます心を小さくしてしまう。終演後、何気なく振り返ると、その人の身体の大きさが必ずしも私のそれに劣るものではないことが了解できて、ちょっぴりおもしろかった。
 K君、今回もありがとう。次は5月の ROUGE かな。