演出家のことば

 生田の2コマはテスト。折り目正しい学生たちが答案を提出しながら丁寧にあいさつしてくれたりする。この仕事を選んだ幸せを感じる瞬間だ。来週の木曜日までに7クラス分の答案が出てくる。熟成する前に採点しなければ。
 夕刻、大学以来の友人であるK君を通じて知り合ったK氏の誕生会のために大塚へ。どうにも私の知り合いにはイニシャルがKという人が多いな。それにしても誕生パーティーなんて何年ぶりだろう。おまけに会費は無料の完全なご招待だなんて申し訳ない気分。さすがに手ぶらでは行けないから、これまた何年かぶりに誕生日のプレゼントを選んだ。
 K氏は、暮れに見に行った舞台の演出家で、私たちよりも7つ年上の人である。ずいぶんと長時間にわたって話をさせてもらったが、独自の視点で縦横に現代を斬るそのことばを聴いていると、なんだか心地よくさえある。アプローチも結論も仏法とは遠く離れたところのもののように思えるのだが、起点から終点へと駆け抜ける瞬間、どこかに通じるものを感じることがある。それは、無理してひとことで言うならば「夢を見ない絶望をしない」ということ。刺激的な夜になった。
 パーティーには先日の舞台の出演者も大勢来ていたが、見ていた人と直に話をするのはちょっぴり不思議な気分。その意味でも刺激的な夜であった。Moさんの「真面目さ」は国立(くにたち)の大学の優等生たちのそれと同じだと思う。帰り道、ようやくそのことに気がついた。そして、国立に通った5年のうちに、私自身の「美意識」のようなものが少しく変化していたことにも気付いたのだった。