夢追い酒

 和歌山のE氏、広島のU氏、それに高校以来の友だちであるMi君と北千住。藤やの小上がりは、よその家に遊びに来たようで楽しい。フワ、スジ、ハチノスといった串煮込みと白菜、葱、豆腐の入った鍋を初めていただいた。キンミヤもほうじ茶も、何も言わないうちに出してもらえるので楽ちん。締めには稲庭うどんとひもかわを入れてもらい、べっこう色になるまでグツグツと。これは絶品だ。
 何を話すというわけでもないのだけれど、何だか無性に楽しかった。E氏とMi君とは初対面だったが、その手の壁などはやすやすと乗り越えてしまう信頼のできる人々である。今日の名言は「石という(名前の)石はない」というあたりか。たいがいのことに首を突っ込む私だが、石と星の話がどれほど苦手なのかがよくわかった。
 そろそろ帰ろうかというときに入って来たのは、大島に身を包み小さなギターを抱えた男の人。「流し」のおじさんだった。ときどき見えると話には聞いていたが、それこそ生まれて初めての体験。どうしてよいやらわからぬままに1曲聴かせてもらい、続いて1曲歌わせてもらうことに。北千住だから、流しだからという理由で「夢追い酒」にしてみたが、カラオケに慣れてしまっているとどうしても伴奏に合わせようとしてしまうのである。流しのおじさんは歌に合わせようとしてくれるから、勢い「お見合い」のような状態に。生の伴奏に戸惑うというのは、実に今日的な問題だと思う。でも、贅沢なよい経験をさせてもらった。
 考えてみれば不思議な取り合わせの4人だけれど、また揃って再会したいもの。今度は広島だろうか。それまでに、ちょっとだけ石と星の勉強をしておこうかしら。