記念の品書き

 日曜日の昼、近所のラーメン屋さんから出前を取る。品書きをどこかへやってしまったので、ついでに1枚持って来てくれるように頼んだ。
 頼んだ品が届いた後、出前に来てくれたご主人と母が玄関先で話し込んでいる。戻ってきたところを聞くと、今月を限りに店をたたむことにしたという話を聞いていたとのこと。
 近くのタクシー会社の運転手さんたちであふれかえるようだった店もこの不景気で客足が遠のき、すぐ近くに移ってきた区役所の職員たちも新たな客にはならなかったという。
 開業以来51年。閉店を決めたご主人に品書きを届けてもらったことの皮肉を思う。新しい品書きは、この店がここにあったことを証明する記念の品としていただくことにした。