チャンピオンの微笑

 久しぶりの休日。会務に関わる連絡をいくつか取った後は、仕事は明日からと決め込んでのんびり過ごした。
 今日の終わる前に、ゆっくりとブログを書くことのできなかった日々のことを振り返ってみよう。最も衝撃的だったのは木曜日の「再会」だろうか。
 その日、学内のATMで送金を済ませて振り返ると、一人の学生が立っていた。順番を待っていたのだろうと思って道を譲ると、私に用があるのだと言う。そう言えば、見覚えのある顔だ。昨年の体育推薦のクラスにいた学生の一人である。
 近くの学生ラウンジに移って話を聞くと、英語の勉強がしたいのだとのこと。ボクシングの日本代表に選んでもらい、いくつもの国を訪ねる機会を得た。英語はまるでできないのだが、行く先々でわずかに知っている単語を並べて口から出してみたところ、各国から集まって来た選手たちとこころを通わすことができた。今までは英語を勉強したいなどと思ったこともなかったのだが、できることなら初歩からやり直してみたい。そういう話だった。
 木曜日の3限目は空いているから、一緒に勉強しようか。私がそう言うと、生真面目な学生チャンピオンは、This is a pen. から教えてくださいと言って、すまなそうにうれしそうに微笑んだ。
 私がATMに行くことを彼が知っていたとは考えられないから、きっと偶然私を見かけて声をかけることに決めただけなのだろうと思う。けれど、いくつもの縁が重なり合って、ここにこの約束は成り立ったのだ。私はいつだって、本気で勉強しようという人の味方でいたいと思う。