夏の宿題

 先日の月例研究会で資料としていただいた海軍兵学校の入試問題を、現役の英文科の学生諸君に解いてもらってみた。休み明けでまるで頭が動かないなどという感想も見られたが、どの学生もよく取り組んでいた。

 家ニ歸ル途中,何處カデ萬年筆ヲ紛失シテヰルノニ氣ガツイタ.放課後テニスヲシヨウト上衣ヲ芝生ニ脱ギステタ時ポケツトカラ落チタノカモシレヌ.アレハ最近獨逸カラ歸ツタ従兄ノ贈物デアツタ.父ハコノ町ノ一番大キナ文房具店デアレト殆ンド同ジ位ヨイノガ手ニ入ルダラウト云ツテヰル.凡ソ五圓位ノヲ弟ト一緒ニ今晩買ヒニ出カケル筈デアル.

 これは昭和15年度の海軍兵学校・海軍機関学校・海軍経理学校の共通問題のうち「和文英訳」の問題。さっと訳してしまえそうなのだが、点検し始めるといろいろなことが気になってくる。例えば、最初の文で過去完了形が使えたか、2番目の文で「脱ギステタ」をどう表現したか、3番目の文では修飾構造の工夫、4番目の文では「アレト殆ンド同ジ位ヨイノ」の部分をどう言うか、最後の文では主語を明示できたかということと「凡ソ五圓位ノ」の言い方など。語彙の面では「萬年筆」・「芝生」・「文房具店」に手こずっているようだった。


 2コマを終えて渋谷へ。J-WAVE SHIBUYA HMV STUDIO で GROOVE LINE の公開生放送を見る。番組が始まる前からスタジオの前にはかなりの数の人。それがどんどん増えてきて、少しずつ詰めていくうちに気がついたら前から4番目くらいに出てきてしまっていた。何組もの親子連れや学校帰りに一人で来たらしい女子高生の姿も見られ、番組を愛する人々の幅の広さにも驚いた。
 今回、実際に番組がつくられる現場を見学し、この番組のプロットが実はものすごく練り込まれており、2人のパーソナリティが実に合理的に連携しているという事実を知った。聴いているだけではわからなかったことだ。ピストンさんの「アクションDJ」ということばの意味もようやく理解。
 サテライト・スタジオなどということばはもはや死語で、西銀座スタジオの三木鮎郎やシントクエコーのロイ・ジェームスの世代のものだろうか。けれど、声だけを届けるはずのラジオがその放送の現場を公開するという方法は、エンターテインメントとしてじゅうぶんに成立するわけで、現在もあちこちで続けられているのである。J-WAVE も六本木に公開用のスタジオをつくってはどうだろう。テナントもポツポツ空いてきていることだし。
 とまれ、ようやく私は夏の宿題を終えたのである。2学期が始まってからやっと宿題に手をつけた小学生のような気分で。次は最終日にも訪ねる予定。