音戸ノ瀬戸

 先日買って帰った「音戸のちりめん」がなくなってしまうのをさびしく思っていたら、「広島ゆめてらす」という広島県のアンテナショップで瀬戸内海の海産物を販売するイベントがあるという情報を手に入れたので、生田の帰りに立ち寄ってみることにした。
 目指す店は新宿駅南口のサザンテラスにある。中に入ると、ちりめん、いりこ、わかめ、味たこ、穴子ロールなどが所狭しと並べられており、これはまさに期待通り。広島から出張して来られた海産物商の店主とおぼしき方が、携帯電話で恐らくは地元の方と「ほいじゃけぇのぉ、送って欲しいんじゃ」などと話しながら、それでも長い箸を使って試食の品を配り続けている。私は店内をうろうろするうちに前を2度通ったが、2度目は違うものを食べさせてくれるのだから、なんと仕事のできる人か。しかし、電話はやめた方がいいかも。
 私はと言えば、ちりめんじゃこと飴色に漬かった広島菜を買って帰ることができて大満足。夕食時には、また大吟醸「雫」の出番となった。ちりめんは音戸に限る。音戸のちりめんは、平清盛が切り開いたと伝えられる音戸ノ瀬戸の近く、倉橋島の近海でとれたものだ。音戸ノ瀬戸は松山へフェリーで渡るときの航路だが、湾曲した狭水道で潮の流れが速く、ここを通るときは、船から見える景色と相まってなぜだかきまってキュンとしてしまう。今度はこの風景を地上から眺めてみたいものだと思う。