淡麗なる大吟醸

 会津坂下(ばんげ)の知人から名物の馬刺をいただいたので、わかる人にはわかる連想で、先日いただいた広島の酒を開けてみた。
 蓬莱鶴は広島市内の白島(はくしま)に酒蔵を持つ原本店の造る酒である。米も水も酵母も県内産にこだわり、特に水は市内の比治山(ひじやま)の井戸から毎朝汲み上げているという。いただいたのは蓬莱鶴の大吟醸「雫」。使用米は千本錦100%とのこと。その名の通り無濾過・袋吊りの製法、つまりは醸された酒袋から酒自身の重みで自然に滴り落ちる「しずく」を一滴ずつ集めるという方法で瓶詰めされた贅沢品だ。
 甘からず辛からず、かなり淡麗なおもむきで、育ちの良さというのだろうか、大事に大事に育まれてきたことを感じさせる酒である。今夜は6勺ばかりですっかり満足した。というより、なんだかもったいない。がぶがぶ呑むなら他の酒があるというものだ。