ささやかな憧れ

 生田キャンパスの食堂のクオリティの高さには以前にも触れたが、実を言えば今年は少ししっくりこないものがあった。と言っても、味や量や接客というような食堂の本質に関わるものではない。毎週のように私とほぼ同じ時間帯に食堂にお越しだった職員の方にお目にかかれずにいたのだ。今年度の授業が始まって1か月半、今日になってようやくその方をお見かけすることができてホッとした。
 白いワイシャツ姿のその方はかなりのご年輩とお見受けするが、髪を短く刈り込んだたたずまいがどこか背筋の伸びた昔気質の職人を思わせる。ある日、何気なく召し上がっているところを見ていたら、その方のランチは味噌汁がお椀ではなくどんぶりで供されていることに気付いた。その後も気にして見ていると、どうやらおかわり分の追加料金を払って、最初から味噌汁を「ダブル」にしてもらっているようなのだった。今日、久しぶりにお見かけしたら、どんぶりが大きな塗りのお椀に替わってはいたが。
 塩分の摂りすぎではと少々心配にもなるが、味噌汁を必ずおかわりする人も世の中にはいるわけだし、まあいいか。いずれにしても倍量を飲みたくなるほど美味しい味噌汁ではあるのだ。いつか私も「味噌汁をダブルで」と言いながら、カウンターに30円を出してみたい。そんなことに憧れるなんて、なんだかなと思いつつ。