人気作家の気分

 混むとわかっているのにクルマで出かけるなんて愚かにもほどがあるが、家族そろっての旅行など何年ぶりか覚えてもいないし、次はいつ叶うかもわからないのだからしかたない。結果として父との最後の家族旅行になってしまった青森への旅に、授業を空けられないという(今となってはそれっぽっちの)理由で加わらなかったがために、今もずうっと後悔しているのだから、こういう旅には出なければいけない。懐の具合も大いに心配なのだが、そうも言っておられず、とにかく出かけてきた。
 ということで、今は福島県の天栄湯という宿にいる。亡くなった父がなじみにしていた鯉料理の美味しい一軒宿で、白河から30キロばかり西に入ったところにある。ここは、auの携帯電話のアンテナが1本しか立たず、同じ部屋の中でも場所によっては圏外になってしまうようなところなのだが、宿の中に無線LANが通っていて、インターネットがまったくストレスなく使える。IT化された秘湯の宿に身を置き、なんとも不思議な気分である。
 今日はパソコンのほかに学会の書類を束にして大量に持参。宿に着くなりさっそく一風呂浴びて浴衣に着替え、部屋のテーブルでチューハイなどをやりながら仕事を進める。もはや缶詰になった人気作家の気分である。会費の入金情報を入力し、返送されてきた名簿原票を元に各種の情報を修正、ついには会員台帳の更新を完了した。やっぱりまとまった仕事を片付けたいときは温泉に限るな。いや「山の上」という手もあるか。そういう贅沢なことを言い続けてみたい。ああ。