ざわわ ざわわ ざわわ

 今日は作曲家・寺島尚彦さんのご命日なのだそうだ。寺島尚彦という名前は知らなくても、「ざわわ ざわわ ざわわ」ということばの繰り返しが印象的な「さとうきび畑」という歌を作った人だと聞けばピンと来る人も多いことだろう。
 寺島さんは作曲家だが、「さとうきび畑」は作詞も手がけていらっしゃる。沖縄を訪れたときの体験が、この歌を作らせたのだという。反戦歌というレッテルを貼ることは簡単だが、そうすることをためらわせるような叙情性がこの歌にはあるように思う。
 この歌の初演は1967年で、最初にレコーディングしたのは、この歌をよく歌っているMさんなのだそうだ。しかし、私が初めて聞き、耳から離れることがないのはNHKの「みんなのうた」でちあきなおみさんが歌っていたものだ。その影響かも知れないが、Mさんの歌いぶりにはまったく納得がいかない。
 私は沖縄のさとうきび畑に立ったことはないが、「ざわわ ざわわ ざわわ」と風が通り抜けていくさまを想像することはできる。
 その風はどこから吹いてきたのだろう。どんな匂いがするだろう。空の色、雲の色、畑の色。その中で、私はどこに立って、この風を感じているのだろう。ただひとつ確かなことは、この風は、Mさんが歌うように引っ掛かったり濁ったりは絶対にしないということ。
 「ざわわ ざわわ ざわわ」ということばの繰り返しは、すでに音楽である。寺島尚彦さんのご命日に、そのみずみずしい感性をあらためて思う。合掌。