青いロマンスカー

 思えば「ロマンスカー」とは不思議な名前だ。小田急以外に、東武も自社の特急用車両を「デラックスロマンスカー(DRC)」と呼んでいたことがあるが、鉄道会社はそんなにロマンスが好きなのか。
 夕方から荒川区の町屋へ出かけることになり、北千住から千代田線を利用することにした。北千住駅のホームに降りていくと、見慣れない色の電車が入線したところだった。おお、これこそ、噂に聞いた小田急の「青いロマンスカー」ことMSEではないか。初めて実物を見たが、地下ホームの光に照らされた車体は、想像をはるかにこえて美しい。
 定刻になり、フェルメール・ブルーと名付けられた塗色の車両がトンネルに吸い込まれていくと、たいていの人はその姿を目で追ってしまうようだ。隣に並んでいたおねえさんもその一人だった。照れくさそうに戻した視線に、うっかり目が合ってしまうが、そうそうロマンスなどというものは始まらないわけで。