構文を見破るよろこび

 夕方から家庭教師に出向く。Y君は高校2年生。通っているのがいわゆる受験校ということもあり、3学期用の教材として配られたのは大学の入試問題を集めた学校オリジナルの冊子だった。さっそく一緒に開いて解き始めてみるが、なかなかに難しい。
 ヒントを得ようと、本文中のフレーズをネットで検索すると面白いようにヒットする。3題が3題とも東大の問題だったが、受験用の参考書などでもたびたび取り上げられている文章らしく、その訳出法を批判する掲示板が立ち上がっていたり、複数の参考書の訳文や解説を比較して検討しているサイトがあったりして、すっかり読み込んでしまった。
 Y君のよいところは、そのような方法を取る私を見ながら、決してその手法をまねしようとしないところである。中学1年生からの付き合いだが、彼はそのときから、問題集の解答冊子が開いていても絶対に目を向けることなく問題に集中することのできる少年だった。医学歯学系を志望しているようだが、一番成績がよいのは英語。ただ、意地悪な文構造を見破って唸りながら喜ぶあたり、やっぱり「理系」の人なのかとも思う。