初釜に着物を思う

 朝から「初釜」に出かける姪を送って隣の隣の区まで。日曜日の都内はずいぶん空いていた。お茶の世界にはいろいろと煩わしいこともあるようで、いつもブツクサ言っている姪だが、それでも初釜は特別なのか着物を着て出かけて行った。
 季節はずれの話だが、ずいぶん前に隅田川の花火大会のテレビ中継を見ていたときのことを思い出した。若い女性アナウンサーが、ゲストの女優を紹介するときに「素敵な浴衣ですね」と言ってしまったのだ。「これは『着物』ですよ」とピシャリと返されてしまったアナウンサーだったが、どのように思ったことだろうか。
 アメリカでの生活が長く英語がペラペラと評判のアナウンサーだったが、せめて「お召し物」ということばを知ってくれていたらと残念に思ったことを覚えている。そう言えば「帰国子女」などということばが使われ始めた頃のことだった。