鮭餅

 姉が嫁いだ先の家では、正月の餅は普通の半分ほどの厚さにのしてあり、倍ほどの大きさに切ってある。初めてみたときには異様な感じがしたのだが、それにはきちんとした理由があった。
 昔から、その家には三が日は醤油を使ってはならないという決まりごとがあるのだと言う。餅も雑煮や磯辺焼きにして食べることが許されない。そこで、鮭の切り身を焼いてほぐし、焼いた餅で挟んで食べるのだ。餅が薄く大きく支度されているのは、鮭を挟みやすいようにするためだったのである。
 世の中には不思議な習慣があるものだと思うが、この「鮭餅」は試してみるとなかなかに美味ではある。普通の食べ方に飽きた方はぜひどうぞ。