連想ゲーム

 かつて、NHKテレビに「連想ゲーム」という人気番組があった。もうずいぶん前のことになるが、ある年の新年第一回の放送の一問目のことをよく覚えている。
 先攻は男性チーム。キャプテンの加藤芳郎が、一人目の解答者である渡辺文雄に対し、一瞬にんまりして最初のヒントを出す。
 --- キャベツ。
 すぐにピンと来たらしい渡辺は、やや興奮気味に答える。
 --- 葉牡丹。
 ピンポン。正解である。「ええっ!どうしてわかるの?」という声が女性チームから上がるが、まさにしてやったりという表情の加藤と渡辺。正月の放送の幕開けにふさわしい出題に、おじさん二人が見事に応えてみせた瞬間だった。
 思えば、加藤さんも渡辺さんもお浄土に還ってしまわれた。最近はずいぶん少なくなったものの、東京の下町では、正月になると軒先に葉牡丹の鉢植えを置く家が多い。この季節、葉牡丹を見かけると、今でも決まってこの日のテレビのことを思い出す。僕の「連想ゲーム」である。