香箱ガニの季節

 親鸞聖人のご命日。心配した雨も昼には上がり、3コマ目の途中には窓から日が差し込んできた。生田の教職員食堂での食事は2週間ぶり。今日のAランチは鶏の唐揚げ油淋ソースだったが、変わらぬおいしさだった。
 おいしいものと言えば、昨日のラジオで、給食の時間にものすごくおいしいものを食べた中学生のことを話していた。以下、読売新聞のサイトより引用。

 石川県輪島市立南志見中学校(生徒数32人)で26日、給食に県漁協輪島支所が無償提供した雌のズワイガニ「香箱ガニ」が1人1匹ずつ出され、生徒たちが地元の旬の味覚を満喫した。地域の産業や食材を知る機会にと、学校側の要望で実現した。谷内誠一校長をはじめ教員らが調理室でカニを塩ゆでし、支所職員が食べ方を指導した。1年の中谷沙貴さんは「おいしい。給食でカニを食べられて得した気分」と笑顔を見せた。来月2日には同市立河井小の6年生にも提供される予定。
http://www.yomiuri.co.jp/photonews/photo.htm?ge=1&id=9832

 記事にもあるが、香箱ガニとはズワイガニの雌のことで、雄に比べると半分ほどの大きさでずいぶん小ぶりなのだが、その分みごとに旨味が凝縮されている。外子(そとこ)と呼ばれる茶色の卵と、内子(うちこ)と呼ばれるオレンジ色の味噌を持っており、その部分が特に味わい深い。11月の初頭に禁漁が解け、およそ年末までが旬というから、今はまさに旬の旬とも呼ぶべき時期である。ラジオで「全校生徒にカニを1匹ずつ」と聞いて驚いたのだが、新聞によれば生徒数は32人なのね。なんだかちょっとホッとした。
 今は白山市という名に変わってしまった松任に住む高校時代の友人を同級生2人で訪ねたことを思い出す。駆け足だったが、楽しい旅だった。昼は、まず加賀棒茶の工場を訪ね、私の強いリクエストで北安田の明達寺をお参りする行程を組んでもらった。夜は夜で、金沢の街に繰り出し、香箱カニにノドグロ、そして土地の人しか飲まないという銘柄の酒をいただいた。瀬戸内海を見ながら死にたいと言っていた自分が、日本海を見ながら暮らしたいなどと言って見事にことばをひるがえしたのはこのときだ。
 翌朝は、早く宿を抜け出して別院にお参りし、帰りに近江町市場に立ち寄った。海産物を扱うどの店にも香箱ガニと甘エビが山のように積まれており、そのさまは感動的ですらあった。うまいものに出会う旅。その終わりに空港で買い求めた松任の「あんころ餅」は絶品だった。このところ、旅と言えば学会かお寺にからむものばかりで、そういう生き方を選んだのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、こんな旅をまたしてみたいとも思う。