獣王の意気高らかに

 久しぶりに神宮球場にヤクルト−阪神戦を見に行った。試合の始まった頃はかなりの降雨で、雨合羽を着込んでの観戦だったが、気がつくと雨は止み、吹き抜ける風が心地よかった。
 1985年10月16日、タイガースが21年ぶりのリーグ優勝を決めた日、やはり僕はここにいたのだった。生まれてこの方、贔屓のチームの優勝というものを経験したことがなかったわけで、実感が沸かないというよりもどう対処してよいのかわからないというのが本当のところだった。監督や選手が次々に胴上げされるのを、スタンドからじっと眺めているのが精いっぱいだった。きっと大きな歓声が球場全体を包んでいたのだろうが、僕には何も聞こえなかった。一回、また一回と宙に舞う選手達が、なぜかスローモーションのように目に映っていた。
 思えば、神宮の森を訪れるのはその日以来のことである。甲子園には、出張の機会を利用して2度行ったけどね。で、今日もきちんと勝ちましたよ。こんなに強い阪神を生きているうちに何度も見られるなんて、まったく夢のようです。