人に趣味あり

 今日は高尾で3コマ。非常勤で哲学を講じていらっしゃるA先生とは最近よく話をするようになったが、ひょんなことからパイプたばこをたしなまれる方だということを知った。ご出身のJ大学の哲学教室はほぼ全員がパイプの愛好家だったそうで、当たり前のように始められたとのこと。僕がパイプを持つきっかけとなった日のことを思い出した。
 初めて学会の月例会に出させてもらったときのことだ。懇親会の席で重鎮であるT大先生の隣りにたまたま座らせていただいたのだが、先生はパイプの煙をくゆらせながら、こうおっしゃったのだった。
「お若いの、タバコはやらないの?」
 次の週末、僕は銀座までパイプを買いに行った。よい研究者になるためには、そうすることが必要だと思ったのである。
 のどを痛めることも多く、もう2年近く火を点けていないのだが、先日は学会の先輩であるO先生からロンドンのおいしいタバコをいただいたことだし、久しぶりに道具を取り出してみようか。
 英語担当のS先生は、村下孝蔵氏を細くしたような面影の実に優しくて穏やかな方だが、これまたひょんなことからダッジ・ラムという巨大なアメ車に乗っていらっしゃることを知った。その前はシボレーのブレイザー、もっと前はロータリーエンジンのクルマに乗り続けていたとおっしゃるから、本当に本物の「走り屋」なのだ。
 人に趣味あり。仕事場でしかお目にかかることのない方々だが、意外な横顔を垣間見ることができて、少し距離が縮まったような気がする。