こころを動かすもの

 帰宅したら、かつて勤務していた学校からメール便が届いていた。開けてみると「募金」のお願いだった。目標は5億円。平成17年4月1日の日付があるから、始まってからもう3年も経っていることになる。
 趣意書に「本学」ということばが使われているのも気になるが、この募金による事業の内容はもっとひっかかる。それは以下の通りだ。

 [1] 21世紀における教育環境の充実
  (1) IT化の推進
  (2) 21世紀にふさわしい教育環境づくり
  (3) 国際交流・異文化相互理解の教育の推進
  (4) 大規模災害に備えた防災対策
  (5) 社会人を対象としたキャリア学習センターの創設
 [2] 就学支援基金の充実
  留学生、経済的な理由による就学困難な児童・生徒・学生への奨学制度の充実
 [3] 120周年誌の発行
 [4] 財政基盤の強化

 もはや部外者なのだから口は謹みたいが、それにしてもこんな募金もあるのかと思ってしまう。[2]はともかくとして、他の各事業はひとから金を募ってやることなのだろうか。
 この学校の設立に関わった渋沢栄一や外山正一は、新しい教育の場が必要だとの信念から、財をなした人々から基金を得るべく、ひとりひとりを口説いて回ったと言う。また、同志社を立ち上げた新島襄は、アメリカを去るにあたり、多くのキリスト者を前に演説して日本にもキリスト教に基づいた学校が必要だと訴え、募金が得られなければ帰れないのだと言って人々の心を動かしたと言う。その頃の話には感動すら覚えるが、この募金にはまったく心が動かない。それは、僕が単に歴史好きなおじさんだからだというわけではないはずだ。