シカが谷川の水を慕いあえぐように
宮田先生が、その著書『教壇の英文法:疑問と解説』*1の「まえがき」で、雑誌『英語教育』の「Question Box」欄で執筆を始めたいきさつを綴る中で次のように述べていることはよく知られている(と思う)。
そして、私が軽い焦燥感に襲われていたときに、“Question Box”欄への執筆の機会が与えられたのである。私は、シカが谷川の水を慕いあえぐように、この新らしい仕事ととりくんだ。
(初版:12版)
そして、私が軽い焦燥感に襲われていたときに、“Question Box”欄への執筆の機会が与えられたのである。私は "シカが谷川の水を慕いあえぐように" この新しい仕事と取り組んだ。
(改訂第1版)
同じことが書かれているのに、漢字の使い方、送りがなの振り方、引用符の使い方が異なっていることに気付く。宮田先生は、ご自分の書かれたものに何度も何度も手を入れられる方だった。先生にとって「完成形」というものは存在し得なかったのだと思う。
『教壇の英文法』については、刷りを重ねるごとに必ずどこかに手を入れていらっしゃったとの噂も耳にしたことがある。奥付の表記が「12刷」ではなく「12版」とされているのは、実際に版を変えていたからなのかも知れない。テキスト研究の立場からは、すべての版を集めてその移り変わりを調べる必要があるのかも知れないが、「労多くして…」という気もするし、ちょっと踏み込みにくいところではある。
さて。「シカが谷川の水を慕いあえぐように」というのは聖書のことばである*2。このことばをもとにした歌があるということは聞いてはいたが、なんたってキリスト教の教会には顔を出さないもので聴いたことはなかった。日曜日の月例会にお見えになった方が、今日、その楽譜を送ってくださった。ありがたいことである。
鹿のように | As The Deer
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谷川の流れを慕う | As the deer panteth for the water
鹿のように | So my soul longeth after Thee
主よ、我が魂 | You alone are my heart's desire
あなたを慕う | And I long to worship Thee
あなたこそ我が盾 | You alone are my strength, my shield
あなたこそ我が力 | To You alone may my spirit yield
あなたこそ我が望み | You alone are my heart's desire
我は主を仰ぐ | And I long to worship Thee
実にストレートな歌いぶりだと思う。