雑誌は東大?

 家庭教師先の男の子の机の上に『東京大学アクション・プランガイドブック 2008』(講談社)が置いてあった。この本の中身については置いておくとして、ちりばめられている写真はたいへん美しい。パラパラとめくるうち、総合図書館の内部を写したものに出くわして、つい感嘆の声をあげてしまった。
「大学に図書館なんてあるんですか。」
「そりゃ、もちろん。東大の図書館は雑誌が豊富にあるのでありがたいんだよ。」
「へえ。でも、誰でも入れてもらえるんですか。」
「『ここにしかない』という資料を調べて、それを見たいと言えば入れてもらえるはずだけど。」
 高校生や中学生が東京大学の規定する「一般の市民」に当るのかはわからないが、図書館に興味を持つのはよいことだと思った。
 僕も大学院に籍を置かせてもらっている時は、よく東大の総合図書館を使わせてもらった。今でも、他大学の紀要などを読みたいときには本当に頼りになる存在だ。そして、あそこへ行くと東大生になりたくなる。
 思えば、「東大の図書館は雑誌が豊富」というのは亡くなった原孝一郎先生が教えてくださったことだった。大学に入りたての頃、「雑誌を見たければ東大の図書館へ行くに限る」と教えられても、その「雑誌」の意味がよくわからなかった。『ホットドッグ・プレス』とか『ビッグコミックスピリッツ』とか『メンズクラブ」とか、そういう雑誌のことではなく、大学や研究機関の紀要(論集)・学会誌・研究会誌などを「雑誌」と呼ぶのだと知ったのはしばらくたってからのことだった。今となっては、なんとも恥ずかしい限りである。
 今はその学会誌を編集する立場になったが、どうにも「雑誌」と呼ぶことに抵抗があり「学会誌」とか「紀要」とかいうことばを選んでしまう。なんたって「雑」には作っていないものね。