仏像を見る目

 学会の年度替わりの仕事も一段落、久しぶりに上野の山に出向いた。平日の昼間だと言うのに、ものすごい人出。それにしても、今年のソメイヨシノはずいぶんと長持ちだ。
 上野では先月末から東京国立博物館で開催されている「薬師寺展」に。日光菩薩像と月光菩薩像の2体が揃って寺門を出るのは初めてのことだそうだ。3メートルもの巨体を1回で鋳造したとの説明を聞き、当時の技術の高さに驚く。
 普段は見られないからとのことなので、脇からも後ろからもじっくり拝ませていただいたが、このとき、自分の目は何を見ていたのだろう。美術品か工芸品か。どうにも信仰の対象とはかけ離れたものであったような気がしてならない。仏像の鑑賞というものは、常にこういう問題を孕んでいるように思う。
 展示の後半で慈恩大師の像を見ていたら、以前の所属寺での読書会では途中でわからなくなってしまった「唯識」のことをもう一度聞かせてもらいたくなったぞ。