かりんとうがらめ

 仕事帰りは千住へ。品書きに「クジラ」とあったので頼んでみると、薄切りを軽くあぶりにんにく醤油をベースにしたソースをかけたものが供された。うまい。おかみさんが言うには、刺身もよいが少し火を通した方がより美味しいとのこと。確かに。私もそう思う。
 常連客は世代が近い。いきおい学校給食にクジラが出てきた話になる。私の思い出のメニューは「クジラのかりんとうがらめ」だ。青椒肉絲を作るときのように細切りにした鯨肉を片栗粉をまぶしてカラッと揚げ、醤油と砂糖をベースにしたタレを煮立てたものに、ピーナッツを細かく刻んだものとともに絡める。
 小学校の頃、これが大好きで、家でも作ってもらいたかったのだが、どうしても母に製法を説明することができなかった。30年以上のときを置いて、今だからわかる、今だから言えるこのレシピ。料理は記憶、料理は知識である。