石山先生

 シュタインベルグ先生の名を懐かしく思い出す人は多い。学生時代にドイツ語を専攻していなかったとしても。
 上野原で控室をご一緒させていただいているドイツ語のM先生は、外語に移られる前のシュタインベルグ先生に別の大学で師事されていた方で、今でもお付き合いがあるとのこと。半月ばかり前、何かの話のつながりでそのことをうかがい、シュタインベルグ先生のグレーのスーツやら白いハイネックやらドイツ製のサンダルやら、あれこれのことを思い出した。
 驚いたのはその数日後のことで、帰り道に池袋を走っているときにそのお姿をお見かけしたのだ。いくらかお年を召されたようだけれど、あの頃と変わらぬ歩き方は立教通りにあって抜群の存在感を示していた。今日、M先生にそのことをお話しすると、シュタインベルグ先生はあのあたりに事務所をお持ちだと教えてくださった。
 名物教授。客員教授として25年にわたって外語に勤められたシュタインベルグ先生はそのおひとりだった。そして、私たちにとっては外語祭の「置きビラ*1」をめぐって静かな闘いを繰り広げる好敵手であった。

*1:「置きビラ」とは宣伝のためにビラを銘々の机上に1枚ずつ置いておくこと。これに対し、手渡しで1枚ずつ配ることを「撒きビラ」という。どちらも、大学時代に先輩から教えてもらったその道の用語である。