奇跡のカキフライ

 夕刻、Mi君と浅草で待ち合わせ。吾妻橋を渡り、かつての本所区の町域へ。忘年会と称して東駒形の「海作」で貝料理を食べる。
 ここは実に僕らの好みにぴったりの家で、何を食べても口に合う。貝の刺身盛り合わせ、煮貝の盛り合わせ、青柳のぬた、名物の味噌玉焼き、なすゴマ、そして奇跡のカキフライ。選んだ酒は「神亀・ひこ孫」の純米(埼玉県蓮田市)と「扶桑鶴」の純米吟醸(島根県益田市)。貝の美味しさをすっかり堪能して、しかもあの値段ならば大満足だ。
 しかし、カキフライというのはあんなに美味しいものだったか。素材の良さはもちろんのこととして、料理人の腕の良さがキラリと光っている。熱々で上手く、冷めて上手い。美味しいものを食べたら誰かに食べさせてあげたくなるものだが、出てきた名前はUちゃん。私たちの共通の友人の名であった。
 気のおけない人と過ごす時間は楽しくて、記憶の引き出しが必要以上に開いてゆく。そして私は「ガーナ」になりたいなどと、わけのわからぬことを口走ってみたりする。