十一月場所

 早めに神保町に向かい、弁当を手配してから出力サービスの店に向かう。そこで、約束もなくほぼ予定通りU氏と会う。レターパックを準備してから会場入りし、プロジェクタのセッティング。
 12時より論文審査会、14時より例会。今日の発表は2本で、私がU氏の露払い。西のU、東のKとさんざん言われたので、この際、相撲用語でおさえておく。
 発表は「なんとか終えた」という気分。昭和27年と聞けばそう遠い昔ではないように思われるが、いざ調査しようとすると相当に困難であることを思い知らされる。そんなことを感想としておっしゃっていただき、ありがたく思う。
 調査方法として新聞を用いることへの批判もあったが、それを裏付けるべく他の資料に当たっていたことをもっと強調しておくべきだったと少し反省もする。ただ、一次資料のきわめて限られている状況下にあっては、新聞を二次資料であるとしてその価値をゼロとすることには疑問を感じる。何より、間違いも多く印刷も不鮮明な当時の新聞から、その時代を生きた人々の息づかいが聞こえてくるような気がするのだなどと言ったら、いくらかセンチメンタルに過ぎるだろうか。
 U氏の発表は、その背景にある壮大な研究の構想を予感させるものだった。調査対象への愛情は研究の確かな原動力なのだと思う。明治期の自習書の「書物としての美しさ」に触れられた部分、聴衆の1人として大きくうなずいたことだった。
 夜は夜で、ひときわ睦まじく。ここが、うそのように多忙な人たちが奇跡的に出会う場なのだと実感する。そして、そこに身を置くことのできる幸福を思う。