ライオンは本館の北、中央通り側

 久しぶりに日本橋堀留町の「花吉辰」へ、これまた実に久しぶりのSs君と。会うたびに落ち着きを増したように見える若い主人だが、腰の低さは変わることがない。いつだったか、この若い主人の「うちにいらっしゃったお客様にはお腹いっぱいになって帰っていただきたい」ということばを聞いたことがあるが、そのことばの通り、つまみも酒も蕎麦もたっぷりの量である。この店は「二八」を標準としているが、今日は「柚子切り」と「十割」も食べられるという三段重ねを頼んでみた。重ねと言っても、食べるのに合わせて次々に運んでくれるあたりは優れたところ。大満足の2時間だった。
 Ss君は着実に歩みを重ねている様子。浮き沈みの激しい業界にあって冷静なまなざしを維持している姿を好もしく頼もしく思う。ことばの端々に絶対の自信を垣間見る思いがするが、それが嫌味に感じられないのはこの人の育ちのよさのあらわれなのだろう。会うほどに刺激を受けて楽しくもある。