評価基準

 短波放送の聞けるラジオを「発掘」し、ラジオNIKKEIにチューニングを合わせてみる。いやいや、短波放送というのはこんなに雑音の多いものだったか。
 BCLなどという世代限定の「趣味」があったけれど、こんなに聞き取りづらい放送をワクワクしながら聞いていたのだなあ。僕らを支えたものは、きっと地球の裏側から届く声を聞くという喜びやダイヤルやアンテナを微調整する楽しみだったのだろう。
 あの頃、ラジオを聞きながらSINPOコードなるもので受信状態を評価し、ログブックをつけたり受信報告書を送ったりしていたことを思い出す。今の僕には、その評価を下す基準というものが備わっていないように思う。フィギュアスケートの審査と同じくらい難しいか。比べものにならないと叱られるか。
 それにしても、こんなに音の悪い放送で聞くクラシック音楽って何なのだろう。なんとも不思議な気分を抱えたまま西落合の家庭教師先に向かったのだった。