その日をカメラに収めた少女を思う

 昨日いただいた創立120周年記念写真集に一枚の興味深い写真が収められている。それはある日の教室の風景なのだが、普通と違うのは、黒板に「大日本帝国万々歳 祝シンガポール陥落」と大書されていることだ。
 昭和17年の卒業生が寄贈してくれたものだとクレジットされている。とすると、この写真はその方が生徒だったときにご自分で撮影されたものなのだろう。
 シンガポール陥落と言えば、1942(昭和17)年2月のこと。卒業を目前にして、記念写真を撮ろうとカメラを持参していたのだろうか。まだ遠いところで進められているに過ぎない戦争を、それこそ遠くに置いて眺めている少女たち。その無邪気さと裕福さとを思うとき、こころの隅の方がチクリと痛む。