旅に出ようよ俺とふたりで

 午前中は文京区民センターへ。日本外国語教育改善協議会の会合である。ある基調発表を聞きながら、自分がどれほど恵まれた環境で教職を勤め研究を進めて来ることができたのか感謝しなければならないと思った。一口に「文法指導の順序性、体系性」と言うが、その順序はどうあるべきかということをこそ突き詰めなければ本当の議論にならないのではないか。文法の参考書に載っている順序で教えれば体系的に文法が習得できるとでも思っているのだろうか。恩師の「思い込みからの脱却」ということばは、こういうときにこそ思い起こすべきものであろう。
 午後は所属寺で報恩講のお逮夜。今年から4年にわたり、住職が『御伝鈔』を拝読する。私たち門徒も蝋燭を灯した燭台や御伝鈔箱を載せた卓を運ぶ役を担った。本堂を真っ暗にして勤める儀式は厳粛で身の引き締まる思いがした。もちろん教えが大切なのであって、教えがなければ何もないことになるが、儀式というものの意味もまた大きいものがあると思いを新たにした。
 帰宅して、フランク永井さんが10月27日に亡くなっていたことが明かされたというニュースに触れた。不遇の晩年を過ごされたが、そのことが大歌手の名誉を傷つけるものでないことを信じたい。よくフランク永井さんの声を「低音の魅力」などと評するようだが、実を言えば彼のキーは非常に高く、高音の延びこそがこそが彼の歌の魅力なのだ。その証拠に、声の低い人は絶対に彼の真似はできない。大きなヒットに恵まれなくなってから出された曲のうち、特に「Woman」と「旅秋」は名曲である。もう一度あの声を聴かせていただきたかった。合掌。