見て美しいことば

 いささか唐突だが「爽昧」ということばが好きだ。「そうまい」と読む。夜明けのほのかに明るい頃を表すことばである。大学以来の友人の出身高校の校歌は丸山薫の手になるもので、その3連目は「昧爽(まいそう)」ということばで始まる。この校歌では「昧爽」を「あした」と読ませているが、「昧爽」と「爽昧」はほぼ同じ意味のことばなのだそうだ。
 「爽昧」も「昧爽」も、日常生活の中では特に使い道を思いつかないことばだが、文字にして見たときになんとも様子がいい。このブログではゴシック系の文字で表示されるが、できることなら明朝系の文字を選び、縦書きにして眺めてみたいと思う。
 このように見て美しいことばというものの存在をときどき感じる。人の名前にもそういうものはあると思う。その双璧だと信じて疑わないのが「田中克彦」と「森尾由美」だ。こちらも明朝系の文字で縦書きにしてみたい。いずれも、実際の人物がどのような人であるかはまったく別の問題ではあるのだが。