まさに古書三昧

 130枚の答案を抱えながら採点に手はつかず、作問4本も遅々として進まず。昨日いただいてきた資料を分類して箱に詰め直してみたり。
 そのうちの1冊 Let's Learn English の Book 2 には紙片が挟み込まれているが、そこにはおそらくは司書の方の文字で「復刻版あり」と書かれている。復刻版を蔵書として持っているから、現物は不要だということだ。この判断は、図書館としてはまったく正しいのだろうと思う。しかし、古いものを探している身にとっては、割り切れないものを感じてしまうのも事実だ。
 神保格『國語音聲學』1925(大正14)年初版、市河三喜『英語學:研究と文獻』1936(昭和11)年初版、石黒魯平『新講言語學提要』1943(昭和18)年初版、田中菊雄『英語廣文典』1953(昭和28)年初版、石橋幸太郎『英文法論』1964(昭和39)年初版、細江逸記『精説英文法汎論』1966(昭和41)年訂正新版第1刷。これらも、すべて後の版が所蔵されているため、譲っていただくことができた。もっとも、本は古いからよいというわけではなく、版を重ねるほどに精度が増すと言うこともできるので、ものを単純に見てはならない。
 宮田幸一の『教壇の英文法』は改訂の前後で内容が大きく変わっているので、両者は別の書物と見なすべきだというのが僕の考えだが、以前、前の版を探しているとき、古書店の親父さんに教えてもらったことを思い出した。
「初版がで出れば、改訂版よりもぐっと安い値で手に入るよ。こういう本は新しいほど価値があるんでね」
 骨董的価値が生まれるほどではない「貴重資料」や、ただの藁半紙の綴りとしか思ってもらえないような「貴重史料」を探し回って、僕らの一生の何分の一かは過ぎて行くのである。