あたしもくたびれた

 国立で3コマ、西東京でサークル、番町で家庭教師。さすがにちょいとくたびれた。「黄金餅」だったか、漬物樽に坊さんの亡骸を詰めてゾロゾロと下谷山崎町から麻布の木蓮寺まで歩いて「ずいぶんみんなくたびれた」という噺があった。志ん生はこのあと「あたしもくたびれた」と言って笑わせるんだった。今度の東京の坂(または街)を歩くツアーはこの道をたどってみようかな。本当にくたびれそうだが。
 ついでながら、この落語の道順に「飯倉片町」が出てくるが、あれは「いいくら」ではなく「いいぐら」が正しい。飯倉片町と言えばキャンティ。カマンベール・チーズケーキと四角いプリンがなんだか懐かしい。そう言えば、あのあたりに「狸穴(まみあな)」という町がある。歌謡曲「別れても好きな人」の2番は「歩きたいのよ高輪」で始まるが、あれはもともと「歩きたいのよ狸穴」だった。渋谷・原宿・赤坂あたりから高輪まではさすがに歩かない。志ん生でなくとも「くたびれた」と言うだろう。