野球に生きて夢多き

 母と兄が夢中になって見ている阪神とソフトバンクの交流戦。テレビの画面を見るとはなしに見て驚いた。ソフトバンクの選手たちが南海ホークスのユニフォームを着ているのだ。調べてみると、ホークスの球団創立70周年を記念し、球団が往年のユニフォームを復刻し販売するとともに、今日一日限定で選手も着用して試合に臨んだのだと言う*1
 南海ホークスと聞いて思い出すことは2つある。
 1つは、『南海ホークスの歌』である。中学生の頃だったか、永六輔の『六輔七転八倒』というラジオ番組が好きで聴いていたのだが、2月1日に放送が当ったとき、キャンプの解禁日ということでプロ野球の全チームの球団歌・応援歌を紹介しながら番組を進めたことがあった。作詞:佐伯孝夫、作曲:佐々木俊一というこの曲を灰田勝彦が歌っているのを初めて聞き、正直のところ好きなタイガースの歌よりも格調が高いなと思ったものだった。
 貴重な音源を相当持っている僕だが、残念ながらこの曲には手が届いていない。灰田勝彦のCDボックスに収録されていたようだが、それはそれは高価なもので、この1曲のためにウン万円を出す度胸はなかった*2
 もう1つは、高校1年のときに数学を教えてくださったU先生のことだ。先生は和歌山のご出身だった。ある日、乗り合わせたバスの中でおたずねしたところ、南海ホークスのファンだと教えてくださった。南海の沿線の少年はホークスのファンになるのだなあと思ったことをよく覚えている。その後何年も経って、大阪・なんばの駅の上に建った「南海サウスタワーホテル(現在のスイスホテル南海大阪)」に泊まったとき、グランドを住宅展示場にされて悲鳴を上げているかつての大阪球場と、なんばの駅に次々に滑り込んでくる南海の電車を眼下に眺めながら、先生のおっしゃったことが思い出された。鉄道とプロ野球との関わりをあらためて実感した思いがした。
 2003年に『南海のホークスがあったころ:野球ファンとパ・リーグの文化史』という本が出版された*3。都市社会学・大衆文化論を専攻する永井良和氏と建築史・都市文化論が専門の橋爪紳也氏という2人の研究者によるこの書は、沿線開発・都市開発と球団経営の関わりや沿線文化としてのファンの姿などを実証的に綴っており、歴史を記述する者に研究に向かう姿勢も教えてくれる名著である。買い求めて一気に読み進めたが、時折、少年時代のU先生の姿を想像したりしていた。

*1:http://www.softbankhawks.co.jp/news/detail/676.html

*2:ネット上で優れたMIDIファイルを提供して下さる方があったので参照のほどを。http://www.biwa.ne.jp/~kebuta/MIDI/MIDI-htm/Nankai_Hawks_no_Uta.htm

*3:この本はまだ入手可能。http://www.amazon.co.jp/%E5%8D%97%E6%B5%B7%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%81%8C%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%93%E3%82%8D%E2%80%95%E9%87%8E%E7%90%83%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%91%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%81%AE%E6%96%87%E5%8C%96%E5%8F%B2-%E6%B0%B8%E4%BA%95-%E8%89%AF%E5%92%8C/dp/4314009470/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1212769202&sr=8-1