素人あえてもの申す

 ラジオに「全国こども電話相談室」という長寿番組*1があるが、今朝、聞くともなしに聞いていたら、「数学道場」なるものを主催している人が回答者として出ていて、おもしろかった。
 「算数嫌いや数学嫌いの元凶は小学校時代に算術をやらせるからだ」という発言をする校長のもとで仕事をしていたことがある。彼は「小学生でも、方程式を教えればすぐにこなせるようになる。早期に方程式を導入することが数学嫌いをなくす方法であり、数学の学力低下を食い止める方策だ」とも主張していた。僕は首を傾げながら聞いていたが、そんなことを言われても数学科の同僚は誰一人として何の反論もしないことが不思議でならなかった。
 算数・数学教育の世界にはその道の人々にしかわからない考え方や常識のようなものがあるのかも知れないが、素人として発言することが許されるならば、小学校できっちりと算術をやらなくなったことにこそ問題があると言いたい。知恵を絞り、考えを寄せ合い、ことばをやり取りしながら答えに近付いていくスタイルの算数の授業が消えてなくなったことこそが、算数嫌い・数学嫌いの元凶であり、数学の学力低下の原因だと思えてならないのだ。
 英語教育に関しては素人の考え、例えば「文法なんかやっているからしゃべれるようにならないのだ」とか「中学・高校・大学の10年間の英語の授業で手に入れたものは何もない」などという意見が大手を振って世間を歩いているようなので、算数・数学教育の素人としてあえて言ってやりたいと思う。早期に方程式が操作できるようになることに意義などあるものか。求められるべきは算術である。小学校の算数の時間にたっぷり頭を働かせることこそが、数学の学力低下を食い止めるための真っ当な方策というものである。

*1:同番組のウェブサイトによれば、第1回の放送は1964年(昭和39年)7月13日だったそうだ。