近所の手前

 未明から雪。いくらか遅く起きると、近所の人たちが雪かきを始めている。こんなに降っている最中だというのに、土砂降りの中で雑巾をかける人がいるものか。そんなことを思いしばらく放っておいたのだが、さすがにそうも行かなくなり少々身体を動かす。
 相当の降雪ではあったが、まだ日のあるうちに雪は止んだ。気温はそれほど上がらないのだが、すぐに雪は融け始め、暮れる頃には積もっていたものもほとんど消えてしまった。つまりは雪かきをしなかったところが融け、わざわざ山と固めたところだけが融け残っている。その様子を目の当たりにし、徒労ということばが頭をよぎる。
 放っておけばよかった。気がつくと身体のあちこちが痛い。その日のうちに痛くなるのだからまだ若い証拠だなどと自分をなぐさめながら、近所の手前に弱い自分を省みる。放っておけばよかった。放っておけばよかったんだ。