楽曲差し替え

 年内の授業は今日で終わり。夜は西落合で勉強の予定だったが急にキャンセルになったので、日比谷のキャトルレーブに寄り『仮面の男/ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』のDVDを入手。明日が発売日だが、前日には店頭に並ぶのである。
 帰宅後、夕食もそこそこに姪に声をかけ、居間のテレビを独占してさっそく視聴。ところが、特にショーの方の収録方法に大きな不満が残ってしまった。せっかくタコ足で踊っているかおり姐さんをなんで抜いてくれないのかというような文句もあるけれど、もっともっと大きな問題がそこにはあるのである。
 それは「ボーカルカット」と「楽曲差し替え」である。TCAのウェブサイトにも以下のような「おことわり」が表示されており、買う前に承知してはいた。しかし、実際に見てみると、これがどうにもならぬほどにひどいのだ。

【おことわり】
使用楽曲の著作権上の理由により、『ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』の下記楽曲使用シーンにおきましてボーカルの割愛及び楽曲の差し替えがございます。あらかじめご了承ください。(映像のカットはございません。)
○第5場♪I Got Nerve (歌:音月・舞羽)ボーカルカット
○第9場C♪It's Raining Men (歌:緒月・大凪・香綾)楽曲差し替え
○第9場D♪It's Raining Men (歌:早霧・緒月・沙央 ほか)楽曲差し替え
○第17場D♪Bridge Over Troubled Water(歌:音月)楽曲差し替え

 つまりは、トップと娘1の最初の銀橋渡りの歌がカットされ、中詰めの曲が差し替えられ、パレード前のデュエットダンスの曲までもが差し替えられているのだ。CDにもボーカルカットはあったが、このDVDに比べればまだまだ「まし」だった。
 実際の公演こそが大切であり、CDやDVDはあくまでも副次的なものであるということは承知しているつもりだ。しかし、それにしたって、このようなものを許してはならないのではないか。画面の中で口をパクパクさせながら踊っている演者を見ていたら、悲しみとも憤りともつかぬ思いでいっぱいになってしまった。
 詰まるところは、ショーの構成上きわめて重要な場面にことごとく借用した曲を当てるような作法にこそ原因があるのである。こういう安易な楽曲の用い方は、舞台そのものの質を下げ、原曲の価値をも貶める。そして、記録や記念にとの思いや、劇場には足を運べなかったがせめて家のテレビで見てみたいという願いでDVDを手にするファンをひどく失望させるのである。
 商業演劇である以上は、生の公演ばかりでなく、CDやDVDといった副次的な商品にも十分に配慮した舞台の構成を目指さねばならない。「著作権」などという権力性を感じさせる文言を隠れ蓑にでたらめを押し通すようなタチの悪い真似はするべきではない。