free card

 今日から出講を再開する。水曜日の3コマはいずれもクラスがやや大きいので面談しながらの作文の添削がなかなか終わらない。次回以降も時間を取って全員とやり取りしようと思う。
 大学時代、通学には都バスの「フリーカード」を使っていた。都バスならば乗り放題なので、遠回りをしたり寄り道をしたり、結局学校へは行かないということもあった。なんとなく学校が遠いという生徒や学生の気持ちがわかったような気になってしまい、それを生活指導上の重大問題と認識できないというのも実に困りものだ。そう言う意味では、教師にはまったく向いていなかった。
 その昔、東京の東のはずれの方までバスに乗って行き、終点だと放り出された町に異境の面影を見いだし、ひどく心細い思いをしたことを思い出した。授業を終えたら、今日は一日乗車券を使ってその町を再訪してみしよう。
 バスを乗り継ぐこと2回。たどり着いたのは道路の立体交差が連なる都会的な町だった。大きな通りはすべて新しく、整備された歩道も広々としている。昔はトロリーバスの操車場だったという広場もすでに姿を消していた。思い出や思い入れのある町ではない。ただ、あの日の暮れかかる空の色だけがむやみに懐かしい。