愛の再生

 所属している会のニューズレターがメールで届く。冒頭のエッセーに木村明先生のお名前を見つけ、懐かしい思いがこみ上げてきた。同氏の名著である培風館の『英文法精解』は、高等学校に入学した私に父が買ってくれた文法書だった。高校時代のことで、当時はお書きになった方についての興味は持つことがなく、今さらながら広島の学風の中に生きられた方であったのだと気付かされた次第。なんとも恥ずかしく申し訳ない思いもする。この趣旨のことを、ニューズレターの編集者にしてこのエッセイの筆者であるU氏にメールした。
 住職からは、昨日の法話について「おさらい」の電話をいただきありがたかった。もやもやしていたところをずばりと言い当てられて、いただいたご法話を時を置いてうかがい直した思いがした。
 たまっている仕事も気になるのだが、午後はこっそりと渋谷へ。そして、夕刻には堂々と新宿へ。新宿では、K君と「遊々団ブランシャ 第13回公演 ☆ルージュ&★ヴェール 新東京レビュー『メリーゴーラウンド トーキョウ 5:ラブリサイクル』」を観る。タイトルが妙に長いが、昨年の暮れに続いてお気に入りのレビューの客となった。幕が閉じたあと、代表の方に何気なく「パワーアップしましたね」と言ったのだが、決してお世辞ではなく、あとで聞けばK君も「精度が上がっている」との感想を持った様子だった。
 劇評はK君に任せるとして、舞台の上の人姿とはまったく美しいものだと思う。渋谷の人は(前にも書いたことがあるけれど)曲を始める直前に背筋を伸ばして呼吸を整える。新宿の人たちは、笑顔のうちに指先にまで張りつめたものがみなぎっている。
 それにしたって、さっきまで舞台の上にいた人が笑顔で語りかけてくれたりすると、なんだか妙に照れくさいものだ。手ぶらで出かけたことを後悔し、帰宅してからネットで花を贈る手はずを整えた。