Signorina! Compagno!

 西東京のサークルへ。引き続き『ローマの休日』を聴き取っているが、今日は身分を隠したアン王女が髪を切ってもらう場面。
 髪を切ったあと、美容師のマリオがアンをダンスに誘ってこう言う。

  But, but, your friends, I not think they recognize you.

 ずいぶん壊れた英語だけれど、そこは置いておいて、この recognize you の部分が「リコー…ニャイジュー」と聞こえるのだ。いや、そう言っているのだ。ここは、「イタリア訛り」などと簡単に片づけずに、イタリア語の綴りで《gn》がどう発音されるかと関連づけて学習するのがよいと思う。
 実は、直後に、

  Signorina!

と言って、マリオがアンを呼び止めるシーンがある。
 この signorina は「スィニョリーナ」とでも表そうか。イタリア語では《gno》は「ニョ」なのだ。だから、イタリア人のマリオは recognize の《gni》を「ニャイ」と言ってしまう。《gn》の部分はイタリア語的で《i》の部分は英語的に発音しているのだ。
 たいしたことではないけれど、ちょっとおもしろい。英語を学ぶついでに他の言語のことをわずかでも知ることができたら、外国語の学習意識を喚起するという点においてずいぶんよいのではないかと僕は思う。
 むかし、ダイハツのクルマに「コンパーノ」というのがあった。これは、compagno という綴りのイタリア語である。発音をカタカナで表記するなら「コンパーニョ」の方が原語に近いだろうか。ここでも《gno》は「ニョ」なのだ。まあ、40年も前のクルマのことが授業中の話題にできるかどうかはかなり微妙なところだけれどね。