備北のまちへ

 広島のバスセンターから2時間弱。備北のまち庄原へ来た。昼前にU氏の研究室を訪ね、学会の会計や紀要編集について打ち合わせる。昨日の理事会では確認しきれなかったことを明らかにして、事務局の動くべき方向は見えてきたか。
 その後は、わざわざ年休を取ってくれたU氏に案内してもらい、市内をめぐる。明治期に英学校を擁したこのまちには、教育への意識とその水準の高さをうかがわせる史跡や施設がいくつもある。市の田園文化センター内にある倉田百三文学館の展示は実に興味深かった。そこで、信楽峻麿師と寺川俊明師の講演録に倉田の「出家とその弟子」を合わせて収めた『倉田百三の精神世界』なる本を入手できたのは幸運だった。
 庄原はまた桜の名所でもある。いつか見てみたいと思っていた英学校跡に立つエドヒガンの古木「藤木の桜」と上野公園の池畔に並ぶ1,000本のソメイヨシノ。いずれももちろんまだ咲いてはいないが、訪れてみると、その枝ぶりやたたずまいから春の盛りの華やかさが想像できて楽しい。いつか、その季節に再訪したいと思う。
 さらに足を伸ばし、お隣りの三次市内にある「奥田玄宋・小由女美術館」で日本画も鑑賞。早春の小さな旅は、終始一貫して高尚な趣きである。
 そんなこんなで広島県内にもう1泊。瀬戸内の太陽を浴びたきらめくような風景も広島ならば、緑と水のゆたかな田園ののどかな風景もまた広島である。このまちにこうして小さな縁をいただいたことを幸福に思う。U氏にあらためて感謝。